5大シャトーの1つシャトーオーブリオンの歴史や評判をまとめて紹介

シャトーオーブリオンは、ボルドー5大シャトーの1つに数えられる高級ワインです。

メドック地区の格付けである5大シャトーの中で、唯一例外的にグラーヴ地方から選出されています。その味わいは5大シャトーの中で最もエレガントで風味豊かと評されており、世界中のワインファンや美食家から高い評価を受けています。

シャトーオーブリオンの基本情報

生産地

シャトーオーブリオンはボルドーのグラーヴ地区、ペサック村に位置します。

約50ヘクタールの畑を所有しており、生産量のほとんどが赤ワインです。ファーストラベルであるシャトーオーブリオンの年間生産量は約13万2000本と言われています。

生産者

シャトーオーブリオンはリブルヌ市長の娘と結婚したジャン・ド・ポンタックにより創業。市長の娘がオーブリオンの土地を結婚の持参金代わりにポンタックに与えたことで、シャトーの建設が始まりました。

ポンタック一族をはじめとして、シャトーオーブリオンは様々な人に所有権が入れ替わりながら、後世へと受け継がれていきます。

現在は1935年にオーナーとなった、アメリカの銀行家クラレンス・ディロンの一族がシャトーを所有しています。

ワインの生産はその一族であるルクセンブルグ大公国のロベール皇太子殿下が担当しています。ロベール皇太子殿下の母であるムッシー公爵夫人は、ディロン家の出身です。ロベール皇太子殿下は2008年からシャトーオーブリオンの会長兼CEOを務めています。

格付け

  • 1855年メドック格付け1級
  • 1953年グラーヴ格付赤ワイン
  • AOCはペサック・レオニャン

1855年の格付けはメドック地区の格付けであるが、シャトーオーブリオンは5大シャトーの中で唯一グラーヴ地方から選出されています。

品種

  • メルロー 45%
  • カベルネ・ソーヴィニヨン 45%
  • カベルネ・フラン 10%

メルロー:シルキーでまろやかな渋みと黒いベリーの香りが特徴
カベルネ・ソーヴィニヨン:力強く重厚な渋みや酸味が特徴
カベルネ・フラン:軽やかで繊細な酸味と渋み、赤いベリーの香りが特徴

シャトーオーブリオンのワインは、ボルドーワインの中で最も「エレガント」と表現されます。なめらかな口当たりで渋みは穏やか。凝縮感のある果実や赤い花、わずかなスモーキーさなど奥深い香りを楽しめます。

他の5大シャトーのワインはカベルネ・ソーヴィニヨンの使用比率が高く、力強い重厚な味わいが特徴です。その反面、シャトーオーブリオンはメルローが50%近く使われるため、メルロー特有のなめらかな口当たりや柔らかな余韻が現れます。

シャトーオーブリオンの歴史

ジャン・ド・ポンタックにより創業

オーブリオンの地はローマ時代からブドウが自生していたという記録も残っており、歴史的な銘醸地であるとされています。シャトーオーブリオンとしての歴史が始まったのは1525年のこと。

オーブリオン領主のリブルヌ市長の娘ジャン・ド・ベロンは、ボルドー市の書記係だったジャン・ド・ポンタックと結婚。結婚によりオーブリオンの土地の一部を譲り受けたポンタックは、徐々に土地を買い増していき1533年には邸宅を購入しオーブリオンの正式な領主となります。

ブドウ栽培は1533年のうちからすでに始めていましたが、1549年にシャトーの建設を開始。翌年の1550年からは本格的なワイン造りを開始し、ここにシャトーオーブリオンが誕生しました。ポンタックは1589年にこの世を去りますが、その後のシャトーは彼の息子たちによって後継されていきます。

1649年にはアルノー3世・ド・ポンタック卿がシャトーを相続。シャトーを引き継いだ、アルノー3世・ド・ポンタック卿によって、シャトーオーブリオンの評判は本格的にヨーロッパへ広がるようになります。

アルノー3世はワインの液体と滓を分けて透明度を高めるスティラージュ(滓引き)や、参加を防止するために樽の中にワインを注ぎ足すウィヤージュ(補酒)など新たなワインの製法を取り入れました。

この製法で造られる木樽熟成のワインがコク深い味わいとなることをアルノー3世は発見します。長期熟成によるフルボディな味わいのシャトーオーブリオンは、ヨーロッパいちのワイン消費国であるイギリスで大きな評判を呼ぶことになります。

これにより活動の拠点をイギリスに移すことを決めたアルノー3世は、1666年にロンドンで「ポンタックの看板」という飲食店を開業。店はたちまち大人気店になります。

コク深く濃い味わいのオーブリオンのワインはイギリス中で話題となり、そこからヨーロッパ各国を魅了することとなりました。

木樽熟成を行ったコク深い味わいのシャトーオーブリオンは、今日における長期熟成ボルドーワインの原型を作ったとされています。

ウィーン会議でフランスの救世主に

ナポレオン戦争での敗戦国となったフランスは、1814年のウィーン会議にて敗戦国としての処遇が決められました。その時にフランスを救ったとも言われているのがシャトーオーブリオンのワインです。

敗戦国であったフランスは、ウィーン会議で領土を奪われる可能性が非常に高いという状況でした。そこで当時のフランス外相であったタレーランは、フランスで最高のワインであるシャトーオーブリオンと、そのワインに合う最高級の料理を携えて外交に挑んだのです。

タレーランは連日連夜、シャトーオーブリオンのワインと美食をもってして、戦勝国の外交官たちをもてなし続けました。シャトーオーブリオンに合わせる料理はどれも絶品でしたが、1年にも及ぶウィーン会議で提供された料理の中にはなにひとつ同じ内容のものが無かったとされています。

フランスの美食とすでにヨーロッパ中で話題を呼んでいたシャトーオーブリオンのワインによって気を良くした戦勝国の外交官たちは、次第に態度を軟化させていきました。

その結果、フランスは領土の大部分を残したままウィーン会議を終えることができたのです。このエピソードから、シャトーオーブリオンはフランスの救世主となったワインとして称えられています。

メドックの格付けで例外的に1級ワインとして選ばれる

1855年にはボルドーメドック地区の格付けが始まります。格付けワインが始まったのは、パリ万博で世界からの来訪者をフランスのワインでもてなすことが目的でした。

このボルドーワインの格付けに選出されるのは、ジロンド川左岸北側に位置するメドック地区のワインです。その中でも、シャトーオーブリオンは格付けが始まる前から非常に高い注目を集めていたことから、グラーヴ地区から例外的に、それも1級の格付けワインとして選出されました。これによりシャトーオーブリオンはさらなる名声を集めることとなります。

現在のシャトーオーブリオンは、1934年に所有者となったクラレンス・ディロンの一族が経営をしています。

シャトーオーブリオンは絶対的な実力を持つワイン

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シャトーオーブリオンはボルドー格付けワインの中でも、絶対的な実力を持っているワインと言えるでしょう。

メドック地区の格付けで例外的にグラーヴ地区にあるシャトーオーブリオンが選ばれたのは、当時から圧倒的な人気を誇っていたことに起因します。スティラージュ(滓引き)やウィヤージュ(補酒)、木樽熟成など、当時としては画期的なワイン製法をシャトーオーブリオンはいち早く取り入れていました。

メドック地区のシャトーに先駆け、長期樽熟成を行ったフルボディの赤ワインのスタイル(を確立したのは他でもないシャトーオーブリオンです。

ワイン界で最も有名な評論家の1人であるロバート・パーカーからは「豊かな香りとエレガントさではオー・ブリオンの右に出るものはいない」と称されています。

パーカー氏が創刊したワイン評価誌「ワインアドヴォケイト」では、シャトーオーブリオンは軒並み90点を超えるパーカーポイントを獲得しています。100点満点の評価を受けた年もあり、1959、1966、1989、2005、2009、2015、2016年に100点の評価を受けました。

シャトーオーブリオンは確かな実力持った偉大なワインですが、5大シャトーの中では最もリーズナブルです。格付け1級ワインの中でも比較的入手しやすいフランスを救った偉大なワインをぜひ1度楽しんでみてはいかがでしょうか。

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